旅が終わり、戦争も終わり。やっとゆっくりとできる……と思ったら、ガイヴェルが部屋を尋ねてきた。 「おい、アシュレム。親父殿はどこだ?」 「さあな。俺に聞かれても困る。仕事がかなり残ってるはずだから、自分の部屋にでもいるんじゃないのか?」  まだ戦争の関連の後始末が色々と残ってるし、当分は何かと忙しいだろう。それまでラムゼイスがまともに外に出してくれるとは思えない。 「事務室にはいなかったぞ。あとなんだっけ、対話室も」 「じゃあ寝室とかがある私室の方かもな」 「うへえ。ちょっと連れて行ってくれよ。そっちは俺一人じゃあ許可がないと入れないんだ」  ああ、そうだったか。 「父に何の用なんだ?」 「親父殿がいない間の前線でのことを報告し忘れててな。ついでに俺の頑張りを報告してなでなでしてもらうんだよ」  ああ、そんな話もしてたなあ。 「お前、そんなに父のことが好きなのか?」 「好きだ。この気持ちがなんなのかよくわからんが、好きなのは確かだ」  ううむ。それはもしかしたらただ甘えたいだけなのかも知れないなあ。父親はいなかったらしいし。まあ、言わないでおこう。 「まあいい。一応そこまでは案内するが、会えなかったら諦めるんだぞ」 「へいへい」  父の私室へと向かう途中、ガイヴェルが思い出したように聞いてきた。 「そう言えばさっきは教官殿がうろうろしてたな。挨拶し損ねた」 「教官?」 「ああ。名前は……アレストル・ファーヴンスって言ったっけか。あの人も親父殿に用事かな」  アレストルはファーヴンス家の当主だ。ガイヴェルは色々と鍛えてもらってるって言ってたな。 「アレストルか。この辺りにいたのなら父に会いに来たんだろうな」  アレストルが来ていて、父が私室の方にいるってことは、何をしているかは大体想像がつくな。来なければよかった。この男には言わない方がいいだろうか。 「じゃああの時声かければよかったんだな」  それはしなくて正解だっただろうな。邪魔者扱いされてたかも。 「お、もしかしてここか?」  たどり着いたドアにはガルヴェイスの文字。父の私室だ。生活するのに必要な設備は中に揃っているので、それなりに広い。 「そうだ。だがガイヴェル、中で何があっても知らないからな」 「どういうことだ?」 「何でもない。入るぞ」 「あ、ああ」  ドアを開け、中に入る。ここに来るのも久しぶりだ。幼い頃は父の寝室で一緒に寝たりもしたものだが……とにかく一直線に寝室に向かうと、聞こえてきた声にガイヴェルの表情が曇ってくる。 「な、なあ。この声って……」 「聞こえてくる通りだ」  寝室から漏れてくる声はこんな感じだ。 「ああ、アレス……たまんねえっ! やっぱりお前とのセックスが一番だ!」 「俺もだ。ガル、お前のケツマンコが一番気持ちいいぞ」  とまあ、寝室の中では聞こえてくる通りの行為をしているのだろう。 「父とアレストルはこんな関係だ。恋人……まではいかないが、若い頃からずっと、二人でセックスをする関係だそうだ」 「親父殿が……挿れられてるのか?」 「彼相手にはいつもそうらしい。ああ、覗くなよ。追い出されるぞ」  忠告はしたものの、ガイヴェルにはもうそんな元気もないようで、床に座り込んでしまった。 「親父殿ぉ……」  あの後、いじけるガイヴェルを連れて戻り、慰めていたら流れでセックスまでしてしまった。ガイヴェルを相手にタチをするのは初めてだったが、それなりに満足してくれた……と思う。  で、次の日の朝になったら、こんなことを。 「親父殿はやっぱり親父殿だ。俺にとっては父親代わりで、恋とかじゃなかったんだ……多分」  ガイヴェルの中で気持ちの整理がついたのだろう。まあ、良かった。 「だから俺はこれから、新しい恋に生きることにするっ! 相手は……」  と、言いかけた所でドアが開き、ガイヴェルの言葉が遮られる。 「ガイヴェル、ここにいたか。前線でお前も頑張ったらしいな。聞いたぞ。ご褒美やるから俺の部屋に来い」 「うへーい。親父殿ー」  ガイヴェルは父について出て行ってしまった。結局まるで変わってないぞ。  さて、俺のところに来てくれるのはいつになることやら。