「お久しぶりです、お祖父様」  祖父様の屋敷、通された祖父様の部屋。祖父様と会うのも三年ぶりか。 「よく来たな、アッシュ。じーちゃんがぎゅってしてやるからこっちに来い」 「はい」  杖を突いて立ち上がる祖父様の側まで行くと、祖父様は両脚でしっかりと立って、俺の身体を強く抱き締めてくれた。 「祖父様、あまり無理はしないで下さい」 「ちびっとだけだから大丈夫だ。あいてて」  結局祖父様はすぐに座り直してしまった。 「おら、クランドルフ。いるんだったら茶ぐらい用意しろ。茶葉はケチるなよ」 「はいはい」  使用人だっているのに、客にさせてしまうところが祖父様だ。 「で、アッシュ。旅はどうだった?」 「そうですね。少しは成長できた気がします。自分の嫌いだった部分も認められるようになりましたし。父のことも改めて好きになれました」  本当はもっと色々と話したいこともあったはずなのだが。何を話せばいいのかわからなくなってしまった。 「そうか。じゃあ戦争はどうだった? ちょっとは前線に出たんだろ」 「はい。あまり役には立てませんでしたが、とても勉強になりました」 「殿下も活躍したんですよ。簡易儀式魔術で王国のトイソルジャーを行動不能にしたそうです」  お茶を用意していたクランドルフが、甘い匂いの漂うカップを並べながら口をはさむ。 「お、そうなのか。頑張ったな」  祖父様が手を伸ばして俺の頭をくしゃくしゃと撫でる。小さな子供に戻ったような気分だ。 「祖父様の手紙と、あの剣のおかげです。あれがなければそもそも前線に向かう勇気なんて出ませんでした」 「そうかそうか。剣は大事にするんだぞ」 「はい。もちろん」  あ、今日持ってくれば良かったかな。まあいいか。 「で、だ。問題はお前だ」 「あいた」  祖父様は杖の先でクランドルフの額を小突く。俺との扱いが極端に違うなあ。 「何でお前がアッシュと一緒に来るんだよ」 「……ご不満ですか?」 「お前がアッシュのものになったら、お前に手を出せなくなるだろうが」  あー、そんなことは考えもしなかったなあ。 「おや、グファイト様はそんなにも私のことを?」 「うるせえ」 「あいた」  また杖でこつんと。ううむ。祖父様とそんなに仲が良かったとは思わなかった。しまったな。 「じゃあ祖父様、半分ずつでどうでしょう」  相手は祖父様だから、こちらがもう少し我慢してもいいぐらいなんだが。そうすると祖父様は拒否するだろうから、このあたりか。 「そうだなあ。そんなところで我慢するか。俺は時々で充分だし」  何だかそんなことになった。 「あの、私の意見は……?」 「お前の意見なんぞどうでもいい。お前は俺のものなんだから、俺の言うことに従うのが当然だ」 「ああ、グファイト様のもの……何という甘美な響き。わかりました。従います」  なんだ、ラブラブじゃないか。俺、邪魔じゃないのかなあ。 「というわけでアッシュ。お前にはタチのクランドルフをやるから。ケツは俺のだからな。勝手に掘るなよ?」  ああ、そうか。祖父様が相手の時は、クランドルフがウケなんだな。ちょっと見てみたくなった。 「今度俺もアッシュみたいに、やってるところの映像を撮影してもらうかな」  むむう。あれ、祖父様にも見られてたのか…… 「しかし杖突いたジジイのセックスなんて、誰も見たがらねえだろうなあ」 「いえいえ。グファイト様はお年を召してもとても格好良いですから」 「ん、そうか?」 「もちろんですよう」  むむ。目の前でイチャイチャしないでほしいなあ。 「今日は泊まってくだろ?」 「いえ、用意してませんけど」 「着替えなんかは用意してあるから大丈夫だ。ああ、アッシュもな。今日はクランドルフの性感帯と弱点についてレクチャーするぞ」  おおう、そんなこと教えてくれるのか。 「それ、もしかして私が二人からひたすら責められるんですか?」 「そうだ。キンタマ空っぽになるまで責めてやるからな。覚悟しろ」 「はあ……頑張ります」  なんだか思ったよりうまくやっていけそうだな。しかしクランドルフは大変そうだ。 「どっちも大好きで選べないお二人と、堂々と同時に付き合うなんて、ちょっと欲張りすぎですかね?」  いや、大丈夫そうだな、この男は。