「ここが……そうなのか?」 「ああ。お前さんにはここで一仕事してもらいたい」  ラックシップに乗り、更に移動用の魔法陣によりレグルスが連れてこられたのは建物の中だった。魔法陣のある部屋以外にもいくつか部屋があり、普通に生活をするための部屋もあった。アクワイリに連れられて建物の外に出ると草原が広がっていた。ただし、レグルスの知る『獣王の庭』や『林檎の森』の草原に比べるとどこか作り物めいていた。なんとなく足元を見ると白い線が引かれていた。どうやら建物をぐるりと囲んでいるらしい。  獣王の庭で戦っていた獅子型の獣戦士であり、現在は林檎の森で『黄金の林檎』を守るために戦うヒーローとしての役目がある彼を、わざわざ連れてきてまでさせる仕事が何なのか、レグルスにはまだ分からなかった。 「何もないように見えるが……どういう場所なんだ?」 「ここはな、簡単に言ってしまえば……廃棄物処理場じゃあ。ただし、その廃棄物を出すのは人間ではなく、世界そのものじゃが」 「どういうことだ?」 「お前さんも生きている以上、垢や抜け毛もあれば、排泄もするじゃろう。同じように世界も生きている……ようなものなんでな。老廃物みたいなものが溜まるんじゃあ。それはそのまま溜めておくと世界そのものに悪い影響が出るのでな。我々が時々処理してやらなくちゃあならん」  そう説明されても、レグルスにはいまいちぴんと来なかった。自分がここで具体的に何をすればいいのかが見えてこない。話を聞きながら穿いているパンツ……獣王の庭の戦士が充分に力を発揮するために必要なサポーターと呼ばれるそれが尻に食い込むのを直す。今穿いているのは橙色のビキニパンツで、腰の横で紐を結ぶタイプだ。 「世界の老廃物はそのままじゃあ直接手出しができん。じゃが、集まると様々な形に変化する。それは例えば生き物の形をしていたり、場合によっては災害のような形を取ったり。このブックは周辺のブックから世界の老廃物を集めて、処理しやすい形に変化するよう誘導しておる」 「処理しやすいのはどんな形なんだ?」 「分かりやすいのは生物のような形じゃな。生物の形になってしまえば駆除することができる。手間は少しかかるが、これが一番安全で確実じゃあ。他のところでも似たような形で処理しているはずじゃぞう」 「ふむ。では俺はそれを駆除すればいいんだな?」 「うむっ。頼むぞう」  細かい部分の理解は後回しにして、自分がやるべきことを確認したレグルス。それから腰のポーチを開き、中にあるピルケースを確認する。中には白い粒がたっぷり詰まっている。足りなくなった魔力を補うために必要な、エネルギーの結晶体だ。駆除にどの程度魔力を使うかは分からないが、足りなくなったら補充すればいいと判断し、ピルケースをしまう。 「そいつらは……どんな姿をしているんだ?」 「生物のような形になったそれば、エラートゥムと呼ばれておる。小さいのから大きいのまで、サイズは様々、姿もばらばらじゃあ。普通の生物に近いものもいるが、色々混ざったようなのが多いなあ。決まった形はないんじゃあ。ああ、黒いという共通点はあるな。お前さんもそれらしいものを見たことがあるじゃろう」 「黒いのか」  レグルスは獣王の庭の戦場で遭遇することのある、黒い影のような戦士や大きな怪物のことを思い浮かべた。生身の獣戦士とはまるで違う異質な存在で、倒すと跡形もなく消えてしまう。怪物は大きいので厄介だが、獣戦士に似た人型の方は本物の獣戦士に比べるとあまり強くない。戦いの練習相手としては丁度良く、一応報酬点ももらえる。 「獣王の庭で黒い影のようなものとよく戦ったぞ。あれがそうなのか?」 「うむ。獣王の庭では獣戦士が処理しやすい形にして、駆除させているんじゃろう。ここでもそれと同じ事をしてくれればいいんじゃが……こちらの方が少し強いエラートゥムが出てくるようじゃあ。気を付けてくれっ」 「分かった。それで……そのエラートゥムと言うのはどこにいるんだ?」  視界いっぱいに広がる草原に、動くものは見当たらない。レグルスはこのブックがどの程度の広さで、エラートゥムがどの程度の範囲にいるのかも分からない。闇雲に歩き回りたくはなかった。 「呼び寄せるからちょいと待っておれ」  アクワイリが呪文を唱えると、足下の白い線が輝いた。そして、建物が半球状の透明な膜で包まれる。更に呪文が唱えられると、どこかから黒いものが集まってくるのが見えた。まず二人の元へやってきたのは小鳥ほどの大きさの生き物だった。それは半球状の膜を超えられず、空中にとどまっている。その姿は虫のように見えた。 「小さいが、こいつらもエラートゥムじゃあ。デカいのもそのうちくるはずじゃあ。儂らはこの結界を行き来できるが、こいつらは入ってこられん。レグルス、こいつらもできるだけ潰してくれっ」 「ああ。『モエルタテガミ』、行くぞっ!」  レグルスは左腕に着けられた腕輪の力で、一番使い慣れた剣と丸盾を手元に転送する。そして名乗りを上げてから結界の外へ出る。まずは近くにいた虫を左手に持った剣で斬りつけると、それは黒い霧のようになって消えた。続けて右手の丸盾で別の虫を殴りつけ、同じように霧散させる。 「ふむ」  倒すことは簡単だが虫の数は多い。一匹一匹潰していてはきりがないと判断したレグルスは、結界から離れて虫の群れに突入する。そこで盾を投げて飛ばし、更に手元に繋がったワイヤーを操って盾をぶん回す。レグルスに群がった虫たちは、竜巻のように乱舞する丸盾に叩き潰されて消えていく。  周囲の虫が減ってきたら場所を移動し、虫の集まっているところでまた丸盾をぶん回す。そうして少しずつ虫の数を減らしていくが、虫はどんどん集まってくるため、数を減らせている実感はなかった。  しばらくして、レグルスは視界の端に大きな影を捉えた。少しずつ結界の方へと近付いてくるそれは、巨大な虫のような姿をしていた。蜘蛛のような八本脚で、クワガタムシのようなハサミがあり、サソリに似た尻尾が生えていた。 「来たなっ。小さいのはいいから、あれを何とか倒してくれっ! 準備が必要なら一度結界に戻るんじゃあ」 「よしっ」  レグルスはとりあえず大蜘蛛に近付き、様子を見てみることにした。尻尾以外の体高だけで人間の背丈ほどもある、巨大な虫だ。それはレグルスが攻撃を仕掛ける前に、その大きなハサミでレグルスに食らいつこうとする。 「おっと」  レグルスは後ろに飛び退いてそれを避け、続けて襲ってきた尻尾を左手の剣で弾いて防ぐ。流れるような動きで右手の盾を飛ばすが、大蜘蛛は硬い甲殻に覆われているようで、この程度の打撃では通用しないようだった。盾を引き戻し、一度結界の中に避難する。  剣と盾を下に置いてから、レグルスは空いた両手を掲げる。その手元に出現したのは……巨大な金鎚だった。それを重そうに下に置いてから、更に何かを転送する。今度は赤い布きれだった。それを広げる前に、レグルスは腰のポーチからピルケースを出して中身を一つ口に放り込む。腕輪による物品の転送はそれなりに魔力を消耗するので、このエネルギーの結晶がなければすぐに魔力切れになってしまうのだった。  それからレグルスは、腰の横の紐を引っ張って解き、穿いていた紐ビキニを脱ぎ捨てる。そして赤い布に脚を通した。ただし左脚だけ。ビキニパンツを縦に半分に切ったような、ワンショルダー型のものだった。 「ほほう。そんなものもあるのか……うむ、なかなか。こっちは儂が預かっておこう」  目の前で堂々と脱ぎ、変わった形のサポーターを身につけるレグルスの姿をいやらしい目で見つめるアクワイリ。脱ぎ捨てられた方の紐ビキニはいつの間にかアクワイリが回収していた。 「これを身につけていた戦士は筋力に優れていたんだ。しかもそれだけではなく、手にしたものの重量を無視するという特殊能力を持っていたんだ。全てを受け継ぐのは難しいが、これで重い武器でもかなり使いやすくなる」  身につけていた戦士の情報が蓄積し、別の戦士が穿くと全てではないがその力を発揮できるサポーター。そのおかげで、レグルスは先程重そうにしていた大鎚を軽々と担ぎ上げることができた。 「では博士、あいつを倒してくる。『モエルタテガミ』、行くぞっ!」  再び名乗りを上げてレグルスが結界を出ると、そこに再び大蜘蛛が襲いかかってくる。突き出される尻尾を大鎚で打ち払い、更にもう一撃。先程の剣と変わらぬ速さで振るわれる大鎚によって、大蜘蛛の尻尾が砕ける。破片は他の虫と同じように、黒い霧のようになって消えた。  それでも大蜘蛛は怯むことなくレグルスに喰らいつこうとする。だが続けて何度も振るわれる大鎚にハサミを砕かれ、脚をもがれる。短くなった尻尾が鞭のように振るわれるが、今度は根本から砕かれてしまう。まともに身動きも取れなくなった大蜘蛛に、レグルスは容赦なく大鎚を振り下ろす。  頭を砕かれた大蜘蛛は、少しの間身を震わせていたが、やがて動かなくなり、全て黒い霧のようになって消えていったそれを確認したレグルスは結界の中に戻った。 「これでいいか?」 「うむっ。よくやってくれたっ! 今日はこれで終わってもいいんじゃが……次の大物が近付いてきているようじゃなあ」  アクワイリの視線を追うと、遠くから大きな人型の何かが近付いてきているのがレグルスの目にも捉えられた。 「今日は自分がレオニスを守るっすからね」  今日はレグルスが出張でいないため、牛型の獣戦士であるアルデバランがヒーロー代理としてレオニスと行動を共にしていた。身体が大きく、筋肉も脂肪もついている肉厚な体型はレオニスにとってそれなりに魅力的だった。  昨夜の出来事からアルデバランに好意を持たれるようになり、急な変化にレオニスは嬉しく思いつつも戸惑っていた。しかしレオニスを守ると言ってくれるアルデバランが以前の彼より頼もしく見え、それは良い変化かも知れないとレオニスは思った。 「その気持ちは嬉しいけど、僕よりもリンゴを守って欲しいんだってば」 「分かってるっす。ちゃんとこの腕輪も博士から借りてきたっすから、助けを呼ぶ声は届くはずっす。自分の脚ならどこでもすぐに駆けつけるっすよ」  アルデバランが腕輪を着けた右腕をレオニスに見せる。レグルスも同じものを着けている、助けを呼ぶ声が届くようになる腕輪だ。レオニスの祖父であるアクワイリが作ったものだ。 「頼りにしてるからね。じゃあパトロールに行こうか」 「うっす」  レオニスはアルデバランと二人、『林檎の森』を歩く。特に巡回ルートが決まっているわけではないので、レグルスにしたように林檎の森を案内がてら色々なところを見て回る。  あちこちを回ったが助けを呼ぶ声は届かず、何事もなくいつの間にか昼過ぎに。レオニスの用意したサンドイッチとお茶で昼食がてら一休みすることになった。  アルデバランは野菜の入ったサンドイッチを気に入り、夢中で食べて喉に詰まらせ慌ててお茶で流し込んだ。その様子を見て、頼もしくなったように見えたのは気のせいだったかな、とレオニスは思ってしまった。  休憩を終えてパトロールを再開する。その後も何事もなく……とはいかず、何者かがレオニスに声を掛けてきた。 「そこの君っ!『黄金の林檎』のありかを知らないかっ!?」  聞き覚えのない大きな声にレオニスが振り返ると、空中に何者かが浮かんでいた。いつも『黄金の林檎』とレグルスを狙ってやってくるトゥバーンに似ていたが、こちらは身体の色が黒い。また太い筋肉がしっかりついたその身体には、白い黒猫褌しか身につけていない。そして、何よりの違いは…… 「その翼、飛べるんだね……」  黒い龍人は背中の小さな翼を羽ばたかせて飛んでいた。トゥバーンにも翼はあったが彼はいつも飛龍に乗っていて、自分の翼では飛べないようだった。昨日会ったトゥバーンの部下らしい三人の龍人も、小さな翼を羽ばたかせているところは見ていない。 「翼なのだから飛べるのは当然だろうっ!」 「トゥバーンは高いところから普通に落っこちてたけど……」 「兄は鍛え方が足りないからなっ。我々の種は小さいうちは普通に飛べるのだが身体が大きく、重くなってくると……多くの者は飛ぶのをやめてしまうのだっ。だが私のように、翼もしっかり鍛えていれば、大人になっても問題なく飛ぶことができるのだっ!」 「へええ……あ、トゥバーンの弟なの?」 「そうだっ。私の名はラスタバン。『黄金の林檎』を求めてはるばるこのブックまでやってきたのだっ!」  トゥバーンの弟だと聞いてから改めてその姿をよく見ると、確かに顔の作りはトゥバーンに似ているようにレオニスは感じた。だが雰囲気も体格も逞しく男らしいような感じで、細身で頼りない感じのトゥバーンとは似ているようで似ていない、という印象だった。 「残念だけど、『黄金の林檎』は貴重なものなんだよ。このブックに来たって手に入らないよ」 「どうやらそうらしいなっ。だから力ずくで手に入れるしかない。そうだろう!」  ラスタバンは喋りながら両腕を上に向けて曲げ、力こぶを強調する。その様子を見て、アルデバランがレオニスを守るように前に立つ。 「レオニス、下がってるっす。ここは自分が……」 「ふむ。『黄金の林檎』を手に入れる前に、やるべきことがあるようだっ!」  ラスタバンが両腕を広げる。アルデバランが身構えたが、相手の次の言葉は全く予想していないものだった。 「レオニス君とやらっ、私と気持ち良く汗を流したり汁を漏らしたりしようじゃないかっ! さあ、私と性交渉に励もうじゃないかっ!」  それはレオニスにとって急な出来事で、何を言われたのかすぐには理解が追いつかなかった。トゥバーンもその部下の三人も、また身の回りの人達も多くはレグルスに惹かれ、夢中になっていたので自分がそんな対象になるとは思ってもいなかったのだ。 「うえっ、僕が、その……ラスタバン、さんと?」 「うむっ、もちろんだっ! さあ、遠慮無く来るのだっ。君が私の逞しい肉体に夢中だと言うことは分かっているぞっ。さあ、この厚い胸に飛び込んでこいっ!」  そう言われると飛び込んで仕舞いたくなるほど逞しく魅力的な身体だったが、レオニスは何とか踏みとどまる。 「ふふっ、そうかそうか。全くいやらしいな、君はっ! そんなにも私のこの逞しい膨らみが気になるというのだなっ! ほうら、ここに顔を埋めても良いのだぞっ!」  その言葉に誘導され、レオニスはついそちらに目を向けてしまう。薄い布を大きく盛り上げるその存在感。トゥバーンもそうだったがタマは内性器になっているようで、サオの形が布越しにはっきりと分かる。そちらに向かって一歩を踏み出しかけたところで、大きな壁が立ちはだかる。それはレオニスをかばうように立つアルデバランだった。 「レオニスには手を出させないっす!」 「ふむ……君のようなだらしない身体でレオニスたんを満足させられると思っているのかっ!?」 「ううっ……それは……いやっ、できるっす! 自分だってちゃんと鍛えてるっすから!」  アルデバランが着ていたTシャツを脱ぎ捨ててその身体を晒した。筋肉がたっぷりで引き締まった身体のラスタバンも、そこに適度に皮下脂肪の乗った身体のアルデバランも、どちらもレオニスにとって魅力的だった。 「むっ、どうやら私のレオニスたんは君のような肥満に対しても性的な魅力を感じているようだ」 「肥満ってほどじゃないっすよう……あと、レオニスはお前のものじゃないっすから」 「いいや、もはや私のものと言ってしまっても過言ではないっ! こんなにも私の大きな陰茎に夢中なのだからっ!」  勝手なことを言いながらラスタバンは褌を解いて放り投げる。力強く勃ち上がったチンポにレオニスの目は惹きつけられる。それを見て負けじとアルデバランもホットパンツとサポーターを脱ぎ捨て、自分のチンポを勃起させる。 「チンポなら自分だって負けてないっす!」 「ぬううっ。ならばすぐ近くで、私の陰茎の方が大きいと言うことを証明するっ!」  ラスタバンがアルデバランの目の前に移動し、チンポを相手のものに押しつけて比較する。レオニスの目には、アルデバランのものの方が長さも太さもわずかに上回っているように見えた。  普段のレオニスであればラスタバンのも試してみたい……となってしまっただろうが、今はレグルスのチンポを受け入れるために、既に受け入れることに成功したアルデバランのものよりも少しだけ大きいチンポを探していた。そのため、ラスタバンのチンポそのものにはそこまでの魅力を感じなくなってしまった。 「……陰茎の大きさが全てではないっ! 大事なのは技術だっ! 私の技術をもってすれば……」 「技術でも負けてないっす! レオニスは自分のチンポでちゃんと感じてくれたっすから!」 「何とっ! 貴様、私のレオニスたんを汚したというのかっ! 許せんっ! 勝負だっ!」  ラスタバンは褌を締め直すと、距離を取って空中からアルデバランに指を突きつける。 「望むところっす! レオニスは自分が守るっす!」  アルデバランも服を着直すと、レオニスを抱えてラスタバンから離れたところに避難させる。それから相手に指を突きつける。 「『ダイチヲカケル』、行くっすよ!」  アルデバランが獣戦士としての本来の名前を名乗った直後その姿が消え、いつの間にかラスタバンの立っている位置のずっと向こう側に移動していた。その後、またアルデバランの姿が消えて、ラスタバンの立っていた位置を挟んだ反対側へ。しかしラスタバンはいつの間にか空中に逃げている。 「どうして避けられるっすか!? まだまだっ!」  今度はアルデバランが一瞬で空中へ。アルデバランは特殊な能力により一瞬で目にもとまらぬ速度まで加速し、また空中を歩くことができる。それらの力で超高速の体当たりを仕掛けても、ラスタバンは平然と避けてしまい、かすりもしていない。空中で、また地上で、同じ事を繰り返すが一度も当たらない。 「貴様がどう動くか、私には手に取るようによく分かるぞっ。そんな単調な攻めで私を倒せると思ったら大間違いだっ!」  アルデバランの突進を避けながら、ラスタバンは勝ち誇ったように声を上げる。しかし超高速で動き回るアルデバランに対し、ラスタバンも手を出せずにいるのがレオニスには分かってしまった。  一度も二人が触れ合わないまま時間が過ぎる。見ていても何の変化もない戦いに飽きてきたレオニスの近くに誰かがやってきた。 「酷い戦いだな。俺はどっちをぶっ倒せばいいんだ?」 「黒い龍人の方が『黄金の林檎』を狙ってきてる方だから、一応敵になるのかな……えっ?」 「よし。『ヨルニカガヤク』、行くぜっ!」  彼はそう名乗りを上げると二本揃えた指を突き出し、そこから光線を撃ち出す。それを浴びたラスタバンが悲鳴を上げて仰け反る。レオニスらのいる方を見て、犯人を見つけるとふらふら飛んできた。 「熱いじゃないかっ! 貴様、レオニスたんを賭けた男と男の戦いの邪魔をするなっ!」 「ほー。そんな戦いだったのか。じゃあ俺がお前らをぶっ倒しちまえばいいんだろ? ま、そんなことしなくたってレオは初めから俺のものだけどな。なあ?」  彼はラスタバンに指を突きつけたまま、レオニスを後ろから抱き締める。分厚い筋肉とそれを覆うもさもさの獣毛の感触が心地良く、レオニスは返事に困ってしまった。このまま彼のものになっていいかも知れないと少しだけ思ってしまい、心の中でレグルスに謝る。 「冗談だって。そんなに困った顔するなよな。お前だってもう年頃だから、もう好きな奴の一人や二人や三人いるよなあ」  レオニスを解放すると、頭をくしゃくしゃと撫でながら微笑みかけてくる。顔の作りはやや恐く見えるが、レオニスに向ける笑顔はとても優しかった。 「うむっ。レオニスたんは私のことが好きなのだっ。そうに決まって……」 「お前は黙ってろ」  何故か自信満々なラスタバンに向けて右手をかざすと、そこから光が広がりラスタバンが呑み込まれる。光がおさまった後、見た目はあまり変わらないが少し焦げ臭くなったラスタバンが地面に倒れる。締めていた褌は炭化していて崩れてしまった。 「うぬぬ……きょ、今日のところは……勘弁、してやろうっ……」  ラスタバンは倒れたまま負け惜しみの言葉を放つ。意外と元気そうだったのでレオニスは少し安心した。 「さて、邪魔者が一人いなくなったところで……そこで隠れたつもりになってるお前、とっとと出てこい」  彼はレオニスの後ろに視線を向ける。レオニスが振り返ると、アルデバランが大きな身体を縮めていた。しかし小柄なレオニスの陰に隠れられるわけがなかった。 「うひいいっ! 人違いっす! 自分、兄貴のことなんて知らないっす!」  などと言い訳しても彼は聞く耳を持たず、アルデバランにずんずん近付いていく。捕まりたくないアルデバランは高速で移動する力を小刻みに使い、レオニスを挟んで向こう側を保つ。レオニスの周りを二周ほどしたところで、伸ばした腕にアルデバランが角を掴まれ、逃げられずに地面に転がされる。 「何でお前がここにいるんだよ。まさか負けて逃げてきたのか?」 「違うっす! 召喚されたっす!」 「戦士としてはまだまだ未熟なくせに、一丁前に召喚なんてされやがったのか」 「うっす。評価点と体格で選ばれたらしいっす」 「お前、評価点だけは高いからな。弱いくせに」 「うう……」  レオニスはアルデバランと初めて会ったときのことを思い出す。特殊能力がある戦士は評価点が高くなる。つまり、評価点が同程度で特殊能力のない戦士に比べると、基礎的な身体能力や戦闘技術になどおいては劣る、ということだ。レグルスに匹敵する戦士を期待して召喚したトゥバーンだったが、期待はずれだったらしく「強くなるまで戻ってくるな」とアルデバランに命令を出したのだった。 「よし。久しぶりに俺が鍛えてやる。感謝しろよ」 「ひいっ、お手柔らかに……」  アルデバランはすっかり怯えっぱなしで、レオニスには二人の関係がよく分からなかった。  橙色のビキニパンツに穿き替えたレグルスの目の前には、黒い単眼巨人が立ちはだかっている。動きは遅いが皮膚が硬く、かなり打たれ強いようだ。レグルスの攻撃が効いた様子はなく、ゆったりとした動きで腕を振るい、脚を振るってくる。その攻撃がレグルスに当たることはないが、時々丸い大きな目から破壊光線を放ってくるのが厄介だった。収束した細い光線は地面を大きくえぐり、拡散させた場合は広範囲の草原を焼き尽くす。  巨人の攻撃を避けながらレグルスは攻め方を考える。レグルスの持っている武器では巨人の皮膚を貫くことは難しい。武器以外の攻撃手段もあるが、魔力の弱いレグルスに使える力では威力もたかが知れている。 「レグルス! どこか弱点ぐらいはあるかも知れんぞう!」  結界の中からアクワイリが声を上げて助言をする。それを受けてレグルスは巨人の姿を観察する。人型をしている以上、人間と同じような弱点がある可能性もあるかも知れない。そう考えたレグルスは巨人の股の下に潜り込み、正面からでは腰巻きに隠れていた股間を下から殴りつけた。しかしぶら下がっている巨大なタマも皮膚は硬く、続けて何度か打撃を加えてもあまり効いていないようだった。  一度結界まで戻ってから向き直ると、巨人に変化が現れていた。巨大なチンポが勃ち上がり、腰巻きをまくり上げていた。ダメージを与えるどころか、適度な刺激になってしまったようだ。 「ほほう。今日のはなかなかのものじゃなあ。あそこまで生物と変わらぬ反応を見せるのは、強力なエラートゥムの証拠じゃあ」 「そうなのか?」 「うむっ。もしかしたら射精までできるかも知れんが……あの大きさではどうにもならんのう。お前さん、身体にオイルでも塗りたくって抱きついてみるか?」 「それであいつを倒せるのならやってもいいが」 「それは難しいのう。大型のエラートゥムがエネルギーを使い尽くすまで相手をしていたら、こっちの身体がもたんじゃろう」 「仕方ない。他の弱点を探そう」  レグルスは改めて巨人を観察する。皮膚に守られている部分にはレグルスの攻撃は効かない。となると、効果がありそうなのは……大きな目だろうとレグルスは判断した。しかし巨人は大きく、その目となると手に持った武器が直接届く高さではない。  結界の中でレグルスは黒いビキニパンツ型のサポーターを転送し、穿き替える。元々は鷲型の獣戦士であるアルタイルのものだったこのサポーターであれば、空は飛べなくとも身軽になる。続けて転送した錐のような形の短剣を手に結界の外へ。 「『モエルタテガミ』、改めて行くぞっ!」  レグルスが巨人に向かっていき、攻撃を避けながら大きな身体を登っていく。そして肩の上から大きな目に向けて短剣を突き出す。しかし直前に巨人は目を閉じ、まぶたに阻まれ傷を負わせることはできなかった。この方法では駄目だと判断したレグルスは、巨人から飛び降りて転がりながら着地する。  襲いかかってくる巨人の攻撃を再び避けながら、距離を取って手元の短剣を投げつける。それは一直線に飛んでいったが、再びまぶたに阻まれる。  レグルスが次の手を考えていると、巨人が目から光線を放ってきた。それを避けながら、あることに気付いた。試してみる価値はあるだろうと判断し、まずはポーチから出したピルケースの中身を一つ口に放り込む。それから手元に新たな武器を転送する。今度は槍だ。  その後、しばらくはレグルスからは攻撃を仕掛けず、振るわれる腕や脚の攻撃を避けながらそのタイミングを待つ。やがて巨人の目が光り、光線を放つ。レグルスはそれを避けながら槍を構え、光線を放っている間は開きっぱなしの大きな目に向かって投擲する。  大きな目を貫かれると巨人は動きを止め、そのまま黒い霧となって消えていった。レグルスは地面に落ちた槍と短剣を回収して結界に戻った。 「よくやったっ! お前さんは強いのう」 「そうか? 俺などまだまだだ。怪物……エラートゥムか。あいつらはなかなか強いが、その分鍛練にはなるな」 「では……もう一体いくか? 近付いてきているようなんじゃが……」  博士が見つめる方向から、空を飛ぶ何かが近付いてきているのがレグルスにも見えた。 「多少は強くなってるかと思ったが……大して変わってねえなあ」 「うう……『ヨルニカガヤク』兄貴が強くなってるっすよう……」  地面に敷いたシートの上にぐったりとしたアルデバランが転がっている。本気では攻撃されていないが、何度も地面に転がされて薄汚れている。レオニスは汚れを払ってやったり、持参したリンゴジュースを飲ませてやったりした。 「シリウスだ。俺にはレオに付けてもらった大事な名前があるんだよ」 「シリウス兄貴……は、レオニスと、どういう知り合いっすか?」 「もう何年前になるかな。ここにしばらく滞在してたんだよ。『黄金の林檎』を狙ってくる連中を蹴散らして、ちょこっと報酬を貰ったりしてた。その時レオは今より小さかったが、俺みたいな奴にも懐いてくれてな。名前が呼びにくいからって、シリウスっていう新しい名前をくれたんだよ」  ヨルニカガヤクことシリウスは垂れ耳の犬型獣戦士だ。赤褐色のもさもさの獣毛で覆われていて、頭部だけは黒っぽい。レグルスにも負けない筋骨隆々の体型で、身長も同程度。顔は恐いが少なくともレオニスには優しかったので大好きだった。 「それで、兄貴は……レオニスと、どこまで、いったっすか? まさか……」 「馬鹿か? レオはその頃まだガキだぞ。俺のチンポ突っ込んだら壊れちまうだろ。俺からは何にもしてねえよ。俺からはな。そうだよなあ、レオ?」  シリウスはレオニスににやりと笑いかける。丁度大人の男の身体に興味津々だった年頃だったレオニスが(今もだが)、寝ているシリウスにしたことはばれてしまっているようだった。 「そうだ。久しぶりにお前に種付けしてやろう。強い戦士のザーメン欲しいだろ? たっぷり取り込んでもっと強くなれよ」  『獣王の庭』の戦士は、強い戦士のザーメンを身体で受けるとその強さが身につく……と言われているらしい。そのため、戦場に出る前から教官や先輩などに尻を掘られると言う。戦場に出るようになっても、強い戦士の元で学びながら性処理がてらザーメンを受ける、という場合もそれなりにあるという。  アルデバランはレグルスを慕っていて、尻を掘られたりもしていたようだったが、どうやらこのシリウスにも掘られていたようだ。レオニスは邪魔にならないように二人から少し離れた。ただ、持っていたローションのボトルだけはシリウスの目に届く位置に置いておいた。  シリウスはアルデバランの服を全て脱がせてから、自分は目の前に腕を組んで立つ。それまで困ったような顔をしていたアルデバランだったが、目の前のそれを見ると目の色を変えた。 「ヨルニ……じゃなくてシリウス兄貴、すごいの穿いてるっすね……」 「これか? 俺の特殊能力を鍛えるためにはこれが一番いいんだよ」  シリウスの穿いているサポーターは少し変わった形をしていた。カップ状のものが股間を覆っていて、そこに繋がったワイヤーのような部分が股の間を通り後ろへ。尻穴だけは辛うじて隠れているような隠れていないような。腰回りに固定するような紐などはないが、前が引っかかっているので下には落ちないようだ。 「それ、勃つとどうなるっすか?」 「気になるか? 見たいならお前が勃たせろ」  シリウスはアルデバランの頭を掴んで引き寄せ、自分の股間に押しつける。カップ状の部分は伸縮性のある布でできているようで、アルデバランは布越しのチンポに夢中でしゃぶりつく。やがてシリウスがアルデバランの頭を引き剥がした時には、布を突き破らんばかりの勢いでチンポが勃ち上がっていた。 「こんな感じだ。嘘みたいなサポーターだが、意外と悪くはないだろ。勃つとちょっと脱ぎにくくなるのが欠点だがな」 「はああ……」  アルデバランはしばらくその姿を観察してから、とろけたような表情でシリウスのサポーターを脱がす。勃つと股間を覆っている部分が少し窮屈で、ワイヤー部分が引っかかって出し入れがしにくいようだった。 「兄貴のチンポ、久しぶりっす……」  アルデバランが目の前のチンポにしゃぶりつく。レオニスの目から見たところ、単純な大きさで言えばアルデバランのものより少し大きいか。亀頭が張り出していてカリはしっかりくびれている。更に根本がまた少し太くなっている。メリハリのあるチンポだった。先端から根本まであちこちを丁寧に舐め、口に含んで喉奥まで呑み込んだりもする。 「お前、こっちばっかり上達してやがるな。あいつに仕込まれたのか?」  尋ねられて、アルデバランは慌てて首を横に振る。「あいつ」というのが誰なのか、レオニスは何となく分かった。ここに来る前にアルデバランはレグルスをしたって行動を共にしていたと聞いている。 「でもあいつのチンポしゃぶって、ケツでもくわえ込んでたのは事実なんだろ。どうせまた『強い戦士のザーメンが欲しい』ってねだったんだろ? 俺の時と同じように」  シリウスはアルデバランの頭を掴み、自分から腰を振って口の中を犯す。アルデバランは苦しそうな声を上げつつも、自分からシリウスの腰にしがみつき、それを積極的に受け入れる。  シリウスのチンポがアルデバランの口を激しく出入りする。レオニスに見せつけるように先端まで引き抜いてから、根本までを一気に呑み込ませる。大きなチンポにも目を奪われるが、それを平然と受け入れてしまうアルデバランの喉がレオニスにとっては驚きだった。 「ああ、たまんねえなあ……とりあえずこのまま一発出すぞ。そらっ!」  さほど時間がかからないうちに絶頂が近付いたようで、シリウスはアルデバランの頭を抱えるように押さえつけ、身体を震わせる。口調はまだ余裕があるような雰囲気を出しているが、その表情は快感に歪んでいた。やがてアルデバランの喉がごくりと音を立てて動くと、チンポがずるりと引き抜かれた。 「はあ、兄貴ぃ……ザーメン溜まってたっすか? 濃くて量も多くて、うまかったっす。もっと欲しいっす」 「よし、今度は下から飲ませてやる。全部脱いでケツこっちに向けろ」 「うっす」  アルデバランは服を全て脱ぎ捨てると仰向けで両脚を抱える。シリウスはレオニスの用意したローションを手に垂らすと、アルデバランの尻穴を弄り始める。 「ごまかそうとしたってこっちは正直なんだよな。最近掘られたばっかりだろ」 「ううう、はいい……」 「まあ、使ってる穴の方が挿れやすくていいけどな」  尻穴の中でシリウスの指はどう動いているのか。レオニスからは分からないが、アルデバランの反応は分かりやすかった。気持ち良さそうに声を漏らしつつ、時々身体を震わせたり仰け反らせたり。ずっと勃ったままのチンポから白く濁った汁が漏れている。  やがて指の数が増えていくと、アルデバランの漏らす声も大きくなる。シリウスのチンポに手を伸ばそうとしているが、上手く避けられてしまいなかなか触れさせてくれない。 「兄貴ぃ、我慢できないっす……兄貴のチンポ、自分のケツに欲しいっす……」 「ようし、そろそろくれてやるか。お前が強くなれるように、こっちが空っぽになるまで種付けしてやる。覚悟しろよ?」  指での責めを止めたシリウスは、自分のチンポにローションをまぶすとアルデバランの尻穴にあてがう。そして、一気に突っ込んだ。 「あぐあああっ!」  アルデバランが苦痛と快感の混じったような声を上げ、同時にそのチンポから汁が勢いよく噴き出る。最初の一撃の後シリウスはあまり動かずに、ゆっくり腰を動かす。しばらくそれを続けると、アルデバランが自分から腰を動かそうとする。しかしシリウスはそれを押さえつけ、ゆっくりとした動きを保つ。大きい動きで抜き差ししたり、下からすくい上げるように突いたり、奥まで押し込んだまま掻き回すように動かしたり。 「兄貴ぃ、もっと……」 「もっと、どうして欲しいんだ?」 「もっと……激しく、突いて欲しいっす。滅茶苦茶に掻き回して欲しいっす。兄貴のチンポでっ……」 「よし。じゃあたっぷりくれてやる。途中で嫌だなんて言うんじゃねえぞ」  ゆったりとした責めで満足できなかったアルデバランが求めると、そこからシリウスの責めが激しくなる。動き自体はさっきまでとさほど変わらないが、少しずつ速く、力強くなっていく。やがてシリウスの一突きのたびにアルデバランは身をよじったり、仰け反らせたりと大きな反応を見せるようになる。 「あああ、兄貴ぃ、いいっ、んぐむううっ!」  声を上げて悶えるアルデバランの口を、シリウスが噛みつくかのように塞ぐ。そのまま舌を絡ませながら、アルデバランが目をぎゅっと閉じて身体を何度も大きく震わせる。口を離したシリウスは、満足そうにアルデバランを見つめながら、追い打ちを掛けるようにぐりぐりと腰を押しつける。アルデバランはしばらくの間チンポからザーメンを溢れさせていたが、その勢いが収まるとシリウスも腰の動きを止めた。 「たっぷり漏らしたな。じゃあ……次は俺を満足させてくれよ?」  シリウスはにいっと笑みを浮かべると、荒っぽく激しい動きで抜き差しを再開した。同時に射精したばかりのチンポを扱いたり、乳首を つまんで捻りあげたり。それらの責めでアルデバランの尻穴の感触が変わるのか、シリウスの顔が再び快感に歪む。 「はあ、ああ……そろそろ出ちまう……ああっ、お前の中に、はあ、ぶっ放すぞ、おおおっ!」  シリウスが責める手を止める。アルデバランには必死で余裕のあるような表情を見せながら、その尻の奥に射精した。少し呼吸が落ち着いてから、シリウスのチンポがずるりと引き抜かれる。すると、条件反射なのか、アルデバランは重そうに身体を動かしてさっきまで自分の尻の中に入っていた、ザーメンまみれのチンポにしゃぶりついた。 「どうだ。久しぶりの俺のチンポは。気持ち良かったか?」  アルデバランはチンポをくわえたままかくかくと頷く。 「やっぱり俺のチンポじゃないと満足できないだろ」  というシリウスの言葉に、アルデバランは動きを止める。そして少し間があってから、取り繕うように頷いた。 「お前……あいつのチンポの方がいいってのか……まさか、俺のよりデカい、なんて言わねえよな?」  その問いにはしばらく反応を見せないアルデバランだったが、やがて意を決してチンポを吐き出し、ぽつりと言った。 「……ちょっとだけ、デカいっす……」 「お前なあ、そういうところだけ正直に答えるんじゃねえよ! こうなったら……こっちはテクニックでカバーだ! 男はチンポのデカさだけじゃねえってことを身体で分からせてやる!」  シリウスはアルデバランの身体を転がすと、口を開いたままの尻穴にローションを注ぎ込み、再びチンポを突っ込んだ。 「むううっ、これでも駄目かっ」  赤いTバック型のサポーターを身につけたレグルスが、拳から火球を放つ。しかしそれは空を高速で飛び回る黒い影……二対の羽を持つ飛龍に簡単に避けられてしまう。魔力を補給しながら続けて火球を放っても無駄だった。  レグルスは様々なサポーターに履き替え、武器を持ち替えて飛龍に挑むが、その速さに追いつけずレグルスからは触れることもできない。次の手が思いつかず、Tバックを脱ぎ捨てて黒いビキニに履き替える。このサポーターなら少し身軽になるが、その程度で追いつく相手ではない。ただ身体が重く感じる赤いTバックよりはいいかと考えただけだった。 「お前さんにも苦手な相手がいるんじゃなあ」 「ああ。やはり空を飛ぶ相手は苦手だ。特に、こんな速さで動かれるとどうにもならないな」  結界内から話しかけてくるアクワイリの言葉に応えながら、次の手を考える。しかしいい手を思いつかないまま、飛龍の矢のような突進を避け続けることしかできなかった。  レグルスの体力も無尽蔵ではないため、少しずつ避けるのも辛くなってくる。結界内に逃げるかどうか迷っていたレグルスの耳に、その声が飛び込んできたのは突然のことだった。 「苦戦しているようだな、我が友よ!」  現れたのはワシの頭と翼を持つ鳥人。レグルスの前に林檎の森でヒーローとして活動していた獣戦士、アルタイルだった。穿いている赤いビキニパンツは、今レグルスが穿いている黒いビキニパンツと交換したものだ。 「おお、よく来てくれた、アルタイル!」 「こういう相手は私に任せてくれ。では、『カゼヨリハヤク』、行くぞっ!」  アルタイルはレグルスの手をぱしんと叩くと、高速で飛び回る飛龍に向かっていった。アルタイル自身も空を飛び、一瞬で飛龍を超える速度にまで加速する。レグルスの目には、飛龍の翼に超高速の飛び蹴りを何度も叩き込む姿が辛うじて捉えられた。やがて、翼が折れ曲がった飛龍が高速で飛ぶ力を失い、アルタイルから逃げるようにレグルスのいる方へふらふらと飛んできた。 「レグルス、とどめは任せる!」 「よしっ!」  アルタイルの呼びかけに応え、レグルスは飛龍に向かって走り、高く跳び上がる。飛龍の上に乗ると、長さのある両手剣を手元に転送。そしてそれを、飛龍の頭に突き刺す。  空中で黒い霧となり、消えていく飛龍。上に乗っていたレグルスは空中に投げ出されるが、そこに飛んできたアルタイルがレグルスの身体を抱えてゆっくり下ろす。大型のエラートゥムがいなくなったところで、改めて二人は向かい合い、手を握り合った。 「久しぶり……と言うほど前でもなかったか。助かったよ、アルタイル」 「礼を言われるほどのことではないよ、レグルス」  二人で言葉を交わしていると、そこに博士が駆け寄ってくる。 「二人ともよくやってくれたっ! やはりアルタイルにも声を掛けておいて良かったのう」 「博士が呼んだのか? では森の守りはどうなってる?」  レグルスがいない間、いざとなったらアルタイルを呼んで林檎の森を守ってもらう、と博士が言っていたのをレグルスは覚えている。もし今『黄金の林檎』を狙う賊などが森にやってきていた場合、アルデバランだけで対処できるのかとレグルスは心配になった。 「そちらには別の者を向かわせてある。見知った戦士が丁度近くまで来ていたのでな」 「そうか。それなら良かった」  レグルスはアルデバランを信用していないのではなくて、先程の自分の戦いのように相性の悪い相手だった場合のことが心配だった。 「こっちでの仕事がこういうものだったら、初めからアルデバランに任せても良かったかな」 「アルデバランにか?」 「ああ。大型の怪物の相手は得意なんだ。あいつは戦士としてはまだ未熟だが、あの特殊能力は強力だ。一流の戦士が相手では動きを読まれてしまうが、大型の怪物には有効だったんだ」  獣王の庭で大型の怪物を相手に圧勝している姿をレグルスも目にしている。ただし、獣戦士型の影の相手は苦手だった。そして、本物の獣戦士の相手も。 「ふむ……あやつの力はどのようなものじゃったかのう?」 「あいつの力はいくつかの能力が組み合わさった複合的なものだ。目立つのは空中歩行だが、これは厳密には空中歩行じゃあないんだ。あれは実は、自分だけが使える足場を作っているんだ」 「便利そうな能力だな。私の飛行能力より汎用性が高そうだ」  アルタイルがアルデバランのことを想像しながら口を挟む。 「そうだな。それともう一つの大きな能力が超加速。これは一瞬で音速を超える速度まで加速して、また一瞬で停止することもできる。それだけでなく、その時に発生する風圧や衝撃波などを防ぐ力も含まれた能力だ。加速状態で衝突した時に自分にかかる衝撃も完全に防いでしまう。とても強力な防御能力だな」 「超高速で突進して、自分は何もダメージを受けず、相手にだけ衝突のダメージを与えるということか……しかも、それを空中でも……確かに強力な能力じゃなあ」 「だが、今のところあいつにはそれだけしかないんだ。武器の扱いも苦手で、格闘も得意ではない。まだまだ未熟な今は、動きを読まれるとあっさり負けてしまう。大型の怪物なら避けられる前に勝てるから問題ないんだが」  才能はあるがなかなか伸びてくれないアルデバランのことが、レグルスは心配だった。自分ももっと強くならなければならないが、林檎の森にいるうちにアルデバランをしっかり鍛えてやりたかった。 「そういうことか。ならば次はアルデバランも呼んでもいいかも知れんなあ。その時こそ森はアルタイルに任せよう」 「うむ。いざとなったら任せてくれ。大型の怪物の相手をするよりは、森を守る方が私には向いているようだからな」 「アルタイル、先程の相手はお前の力がないと勝てなかったぞ。怪物の相手が向いていないということはないだろう」 「いやいや。私はこの翼が全てだからな。速く飛ぶために武器も防具も身につけていないから、攻撃は徒手格闘に限られる。大型の怪物が相手の場合、私の蹴りだけで倒しきるのはなかなか難しいのだ。先程とどめをお前に任せたのもそのためだ」 「そうだったのか」  大型の怪物のしぶとさはレグルスも身をもって知っている。先程の飛龍型の怪物は、現状では二人の力を合わせなければ倒せなかったのだ。レグルスがあの高速飛行にも対応できる力を身につけるか、アルタイルが別の強力な攻撃手段……例えば魔力による攻撃などを身につけなければ一人で倒すのは難しいだろう。 「俺もお前も、更に強くなるためには足りないものを身につけていかなければならないようだ。俺ももう少し魔力を鍛えたり、相手の速さに対応できるようにも鍛えたりもしたいが、そう簡単にはいかないな」 「うむ。私も魔力を鍛えたいがなかなか……そうだ。速度を鍛えるのであれば、私でも少しは協力できるだろうか? サポーターだけではなく、私の精液を受ければ少しは速さが身につくかも知れないぞ」 「おお、そうしてくれると助かるぞ。今からでも問題ないか?」 「うむ、構わないぞっ。ではお前の尻の奥に注ぎ込もう」  二人は結界内の建物に入っていった。いやらしい笑みを浮かべるアクワイリが後に続く。 「では行くぞっ」 「ああ。頼む」  ベッドの上でレグルスが四つん這いになり、自分から尻を広げた格好で待ち構える。そこに後ろから覆い被さるようにアルタイルが近付く。そして、しっかりとほぐされた尻穴にチンポを押し当てた。そのまま押し込もうとしたところをアクワイリが止める。 「こういうものもあるぞ」 「おお、ではありがたく使わせてもらおう」  ローションのボトルを受け取ると、中身をアルタイルは自分のチンポに塗りたくった。レグルスの尻穴にも塗り込む。邪魔になる尻尾を横に避けて、レグルスのものにも負けない大きさのチンポを改めてレグルスの尻穴に突き立て、ゆっくりと呑み込ませていく。 「おお、入ってきているぞ、お前の一物が……」 「そうだっ。私の一物だぞ。きつくはないか?」 「ああ、しっかりほぐされたからな。はあ、もっと、激しく突いてくれても、構わないぞっ!」 「よし。しっかり受け止めてくれっ!」  アルタイルが腰を動かし始める。まずはゆっくりと前後に抜き差し。それから上下に突き上げたり突き下ろしたりするような動きも混ぜつつ、レグルスの尻穴を掻き回していく。 「ふうう、お前は尻穴も一級品だな……包み込んで、吸い付いて……力強く締め上げる。はああ、これを、意識してやっているのか?」  気持ち良さそうに吐息を漏らしながら、少しずつ抜き差しを速く、激しくしていくアルタイル。レグルスを責めているというよりは、レグルスに搾り取られようとしている、という様子だった。 「いや、そんなつもりは……ないっ、ああ、アルタイル、そこがっ……」 「そうか。お前はここが感じるのだなっ」  快感のつぼを捉えたのか、アルタイルが調子よく突き込み、レグルスに快感の声を上げさせる。しかし、アルタイルもチンポを絞り上げられ、いつ射精してしまってもおかしくない状態だった。快感をごまかすように、色々と動きを変えて突き込む。抜き差しをやめて、奥まで押し込んだ状態で更にえぐり込んでいく。しかし、限界はますます近付く。 「レグルスよ、お前を先に満足させたかったが……難しいかも知れん。ああ、済まない、限界が近いっ……」 「ああ、いや、アルタイル、俺も、もう、くううっ、駄目だっ、んん、はあああっ!」  咄嗟の判断で、アルタイルはレグルスのチンポに手を伸ばす。そして尻の奥をごりごりとえぐってやると、手の中にねっとりとザーメンが吐き出される。同時にアルタイルもチンポは強く絞り上げられ、耐えきれずに達してしまう。 「おお、私も、出るぞ、我が友よ、受け止めてくれっ!」 「ああ、分かるぞっ、お前の一物が、どくどくと動いているのがっ……」  アルタイルはレグルスの尻の奥に大量のザーメンをしっかりと注ぎ込んでから、チンポを引き抜く。それから手で受け止めたレグルスのザーメンを舐め取った。尻からではなくても、少しだけ身体の力が増してくるような感覚があった。 「アルタイル、気持ちが良かったぞ……」 「私もだ。どうやら我々は身体の相性は悪くないようだな」  行為を終えた二人の様子をしっかりと見ていたアクワイリも満足そうだった。 「ではこのままもう一発いこう。お前の尻であれば、私は何発でも出せそうだっ!」 「そうか。では満足するまで何発でもたっぷりと注ぎ込んでくれっ!」  アクワイリは自分も二人の行為に混ざりたかったが、まるで疲労の色を見せない二人の獣戦士の、無尽蔵とも思える体力についていく自信がなかったので諦めた。二人が満足するまで行為を終えた後、博士はレグルスを連れて帰らなければならないのだ。  レオニスの目の前では、シリウスとアルデバランの行為が続いていた。それをじっと見ていたので、いつの間にか隣にいた人物の存在に気がつかなかった。 「なかなか見応えがあるなっ。レグルスたんがいないのは残念だが、あのもふもふ犬、なかなか男前ではないかっ。私にも紹介したまえ、少年っ!」 「あ、トゥバーン。いたんだ」  いつの間にか、レオニスの隣に細身の白い龍人が正座していた。レオニスも見慣れたその男はトゥバーン。昨日はいなかったが、『黄金の林檎』とレグルスを狙っていつもやってきていたのは彼だった。すぐ近くではいつも乗ってきている飛龍が丸まって休んでいた。 「アレルギーの症状は治まった?」 「うむっ。部下の持ってきた薬のおかげでなっ。今日は元気になったことを、心配しているであろうマイスイートハニーに報告に来たのだが……」 「トゥバーンのスイートハニーかどうかはともかく、レグルスは今日は出張でいないよ。残念だけど。まあ、待ってればそのうち帰ってくると思うけどね」  今日中には帰ってくるとレオニスは聞いていた。ただ、向かう先とここでは時間の流れが少し違うらしく、いつになるかは分からないようだ。 「むう……では待つしかあるまいっ」 「ちなみにあの薬、レグルスが爺ちゃんに頼んでくれたんだよ」 「おおお、つまりあれはレグルスたんの愛! なるほど、よく効いたわけだっ!」  都合のいいように解釈するトゥバーンの、いつも通りの様子を見てレオニスは少し安心してしまった。林檎の森の住人にとっては『黄金の林檎』を狙う悪人のはずなのだが、レオニスはトゥバーンはあまり嫌いになれなかった。男の好みが近いのもあるだろうか。 「それで少年、あのもふもふ犬のことを早く教えるべきだっ!」 「ああ、あの人もレグルスとかと同じように『獣王の庭』の戦士だよ。本来の名前は『ヨルニカガヤク』だけど、こっちではシリウスって名前で呼ばれてるから、そう呼ぶといいよ」 「ふむ。あの逞しい身体はもちろんだが、凶悪な顔と高圧的な態度はレグルスたんとはまた違った魅力……」 「見た目とかは恐いけど結構優しいよ。何年か前にしばらく森に滞在してたことがあってね。僕も可愛がってもらってたんだよ」  レオニスはその時のことを思い出しながら話す。 「なんとっ。羨ましいぞっ! それで……あの男は強いのかっ!?」 「どのぐらいの強さなのかは分からないなあ。少なくともアルデバランよりは圧倒的に強いみたいだけど。あと、トゥバーンの弟だっていうあのラスタバンにもあっさり勝ってたし」  強くて頼りになるシリウスだが、レグルスやアルタイルと比べてどうなのかまでは分からない。 「むう、弟が来ていたか」 「うん。シリウスに負けてしばらくその辺で死んだふりしてたんだけど、いつの間にかいなくなっちゃった。実の弟なの?」 「うむ。実の弟ではあるが、私の故郷である『翼の果て』の民としては出来損ないと言わざるを得ない。我々は高度な技術や知識を得る代わりに翼を棄てた種なのだ。だが弟はそれらを身につけることもせず、身体だけしか鍛えていない。レグルスたんのように戦士に向いた種であるのならばそれで問題はないが、我々はそうではないっ。あれは種の誇りを捨ててまで選ぶ道ではないっ!」  真面目な顔をして語るトゥバーン。レオニスがトゥバーンのそんな表情を見たのは初めてだった。真面目にやっているように見えなかったトゥバーンも、自分の故郷や種族の誇りをしっかりと守ろうとしていたのだと知らされ、レオニスは少し見直した。 「おおっ、もう一戦交えるみたいだぞっ。これで何回目だ?」  真面目な話をしていたと思ったら、すぐにその意識は目の前で繰り広げられる二人の絡みに向かう。既にアルデバランの尻の奥に何発目かを吐き出したシリウスだったが、まだまだ元気があるようだ。アルデバランは重そうに身体を動かしながらも、シリウスの責めにしっかり応えている。  結局レオニスも二人の行為の方に意識を集中させてしまう。目の前ではシリウスがアルデバランの巨体を抱え上げて、下から突き上げている。やがて下からの突き上げが乱暴になっていき、二人とも身体を大きく震わせて動きを止める。ドロドロに汚れたアルデバランの身体がゆっくりと下ろされ、解放される。どうやら今日はこれで終わりのようだ。 「どうだ。久しぶりの俺のチンポは。あいつのよりちいっとぐらい小さくたって、気持ち良さでは負けてねえだろ」 「うっす……兄貴のチンポ、気持ち良かったっす……」 「そうだろ。お前にはもっと、俺の方が優れてるんだってことを……ん?」  言いかけた言葉を切り、シリウスがある方向へ視線を向ける。何かが近付いてきていた。 「ああっ! てめえはっ!」  シリウスが大きな声を上げる。少し遅れて、レオニスも近付いてくるのが何者なのか分かった。それは空を飛ぶアルタイルによって運ばれているレグルスだった。アルタイルはレグルスを下ろすとレオニスに軽く挨拶をして、またすぐにどこかへ飛び去る。アルタイルがいなくなってから、シリウスはレグルスに近付いた。 「てめえ……『モエルタテガミ』! 何しにここに来やがった!?」 「お前は……『ヨルニカガヤク』、だったか。俺がここに来た理由は単純だ。俺は今、この『林檎の森』でヒーローの役割を任されているんだ。アルタイルの後を引き継いでな」 「何だって? じゃあ……よし、しばらくはここにいるってことだな? また俺と勝負しろ! 今日はもう遅いから、明日! お前をぶちのめしてやる。覚悟しとけよ!」  それだけ一方的に言うと、シリウスはどこかへ去っていった。残された者達はしばらくシリウスの姿を見送っていたが、やがてレグルスが口を開いた。 「トゥバーン、元気になったのか」 「うむ。レグルスたんの愛の力でこの通りだっ!」 「それは良かった。今日は少し疲れているから、残念だがお前の相手をする余裕がないんだ」 「む、レグルスたんはお疲れか。私も病み上がりだからなっ。今日のところはこれで勘弁してやろう。では明日、また来るぞっ!」  トゥバーンは飛龍に飛び乗ると、笑顔でレグルスに手を振りながらどこかへ飛んでいった。それを見送ってから、レグルスはレオニスに話しかけた。 「レオニスは無事だったか? 俺がいない間、危険なことはなかった?」 「うん。大丈夫。守ってくれる人もいたからね」 「それなら良かった。これは帰りに買った土産だ」  と、レグルスから手渡されたのは紙袋に入った何かだった。開けてみると、小さいビンがいくつか入っていた。 「たまにはリンゴ以外もどうかと思ってな。良かったら食べてくれ」  それは様々な果物のジャムだった。リンゴを使ったものならいくらでも手に入るが、それ以外の果物は注文するか他のブックへ買いに行かないとあまり入ってこない。気遣いがレオニスは素直に嬉しかった。 「ありがとう。折角だからこれでお菓子でも作ろうかな。一緒に食べようね」 「ああ、その時はありがたくいただこう」 「じゃあ、今日は帰ろうか……どこかで身体洗ってからね」 「うむ」  レグルスから漂う臭いから色々な想像を膨らませながら、レオニスはレグルスとアルデバランを連れて共同浴場へ向かった。